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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)60号 判決

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、審決の理由の要点、本願商標の指定商品及び登録出願日、並びに、引用商標の構成、指定商品、登録出願日及びその設定登録日が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

本願商標の構成に関しては、その構成が別紙(一)に表示したとおりの構成からなるもので、黒色で太くデザイン化した四文字のローマ字からなる上段部分と輪郭のみを黒線で描いた籠文字にデザイン化した八文字のローマ字からなる下段部分との上下二段の構成部分からなるものであること、及び、右構成部分のうちの下段部分が『ELECTRIC』の文字を表わしたものであることについては、当事者間に争いがないものの、右構成のうちの上段部分については、原告は、「FUJI」の文字を表わしたものであるとする審決の認定を争い、当該部分は「FUSI」とも「FUJI」とも判読し得るようデザイン化したものである旨主張する。しかしながら、右主張自体からもうかがうことができるように、また、その書体自体からみて、取引者、需要者の多くは、右上段部分は一見して「FUJI」の文字を表わしたものと認識するものと認めるのが相当であるから、当該部分はJをやや変形させて表現し、「FUJI」の文字を表わしたものということができる。

二 審決取消事由についての判断

1 前記一に述べたところによれば、本願商標がその構成文字全体から「フジエレクトリツク」の称呼を生ずることは明らかである。

2 次に、本願商標が「フジ」の称呼をも生ずるものであるか否かについて検討する。

本願商標の構成は、別紙(一)のとおり、「フジ」と称呼される構成部分と「エレクトリツク」と称呼される構成部分とが二段に分離して表わされ、両者の各文字の大きさ及び色彩が相違するなど、二つの構成部分がそれぞれ独立して把握され得る要素も含まれている。しかしながら、本願商標の構成において、上段一文字目の「F」の左側辺と下段一文字目の「E」の左側辺とは縦軸を一にし、且つ、右「F」の左上部と「E」の左下部にそれぞれ同じような丸みが施され、また、上段文字、下段文字のデザイン化の態様も共通しているところから、二つの構成部分は結合した一体感のあるものとして視覚に訴え、把握されること、両者の各文字の大きさの相違は僅かなものであり、必ずしも二つの構成部分を一体のものとして把握する妨げとはなつていないこと、両者の各文字の色彩の相違も、これによつて一方のみが顕著に看取されるものではなく、むしろそのコントラストによつて両者がそれぞれに引き立つて看取され、両者の一体性を助長する効果を奏しているものであることが認められ、二つの構成部分は外観上不可分一体として把握されるのが通常であると認められる。

してみると、本願商標は、上段部分のみが看取されて取引に資される場合が多いとはいえず、したがつて、審決のいうように「フジ」の称呼をも生ずるものと認めることは相当でない。

3 一方、引用商標が、その構成文字に応じて、「フジ」のみの称呼を生ずることは明らかであるが、本願商標から「フジ」の称呼が生ずるものと認められない以上本願商標と引用商標とは称呼上類似するものと認めることはできず、審決にはこの点の認定、判断を誤つた違法があり、その取消しを免れない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由があるからこれを認容する。

〔編注1〕本件における特許庁における手続の経緯及び審決の理由の要点は左のとおりである。

一 原告は、昭和五二年一月一一日、別紙(一)表示のとおりの構成よりなる商標(以下、「本願商標」という。)について、第一〇類「理化学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)、光学機械器具(電子応用機械器具に属するものを除く)、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具(電子応用機械器具に属するものおよび電気磁気測定器を除く)、医療機械器具、これらの部品および付属品(他の類に属するものを除く)、写真材料」を指定商品とし、登録第三三六四四九号外七件の登録商標及び出願商標を連合商標として、商標登録出願(昭和五二年商標登録願第八七六号)をしたが、昭和五六年四月一七日拒絶査定を受けたので、同年五月一八日これを不服とする審判を請求した。特許庁は、右請求を昭和五六年審判第一〇二一六号事件として審理したうえ、昭和六三年一二月二七日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決をなし、その謄本は平成元年二月一五日原告に送達された。

二 審決の理由の要点

1 本願商標の構成、指定商品及びその登録出願日は、前項記載のとおりである。

2 これに対し、原査定が本願の拒絶の理由に引用した登録第四二五六六五号商標(以下、「引用商標」という。)は、「FUJI」のローマ字を横書きしてなり(別紙(二)表示のとおりである。)、旧第一八類「理化学、医術、測定、写真、教育用の器械器具、眼鏡及び算数器の類並にその各部」を指定商品として、昭和二六年七月一四日登録出願、同二八年五月二一日登録、現に有効に存続するものである。

3(一) よつて、本願商標と引用商標との類否について判断するに、本願商標の構成は別紙(一)に表示したとおり、「FUJI」の文字を黒色で太く、「ELECTRIC」の文字を輪郭のみを黒線で描いた籠文字で、しかも、それぞれをデザイン化した文字をもつて上下二段に表わしてなるものである。

(二) しかして、前記した「FUJI」の文字と「ELECTRIC」の文字とは、二段に分離して表わされているばかりでなく、両者の各文字の大きさ及び色彩も相違するものであるから構成上一体性がなく、しかも、「FUJI」の文字は黒色で顕著に表わされてなり、更に、「FUJI」の文字と「ELECTRIC」の文字とを常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情は見当たらない。

(三) してみれば、本願商標は、「FUJI」の文字のみが看取されて取引に資される場合も多いとみられ、構成文字全体より「フジエレクトリツク」の称呼を生ずるとしても、「FUJI」の文字より「フジ」の称呼をも生ずるものと認められる。

他方、引用商標は、構成文字に応じて、「フジ」の称呼を生ずること明らかである。

そうとすれば、本願商標と引用商標とは「フジ」の称呼を同じくする類似の商標といわざるを得ない。

(四) したがつて、本願商標と引用商標とは、称呼上類似の商標であり、指定商品も同一または類似のものであるから、本願商標は、商標法四条一項一一号に該当し、登録することができない。

〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。

別紙

(一)

<省略>

(二)

<省略>

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